ここまで([NA-GIS90]~[NA-GIS101])、シェープファイルの空間参照系は基本的にJGD2000(日本測地系2000・緯度経度座標系)でした。データを整備する段階では、JGD2000で問題ないと思います(ここまで説明の都合上、JGD2000のデータを使ってきたという面もあります)。
ところが、本格的に空間演算・空間分析に入っていこうとすれば、JGD2000のままでは不都合です。なぜなら、JGD2000は緯度経度座標系であり、座標空間上の単位が「度」であるため、距離・面積計測や距離設定に基づくバッファ分析などを行おうとするときに支障をきたすからです。たとえば、「駅から500メートル」は容易にイメージできますが、「駅から0.022度(約1分20秒)」といわれるととたんに難しくなります。
そのため、空間演算・空間分析の段階、あるいは、レポート等に掲載する完成図をつくる段階では、座標空間上(地図)の単位が「メートル」で、距離・面積・方位が正確とみなすことができる平面直角座標系やUTM座標系のデータを用いることが望ましいといえます。もちろん、最初から平面直角座標系やUTM座標系のデータを使えば済む話ではありますが、実際にはそれが難しいケースも少なくありません。そこで今回は、シェープファイルの空間参照系を変換する方法について解説します。(QGIS 2.14.9を使用)
なお、平面直角座標系とUTM座標系のどちらを使うかは、ケースバイケースです。ここまで([NA-GIS90]~[NA-GIS101])の話では、大阪府と兵庫県の2府県(にまたがる地域)を事例にしてきました。平面直角座標系では、大阪府は第6系、兵庫県は第5系に属すため、プロジェクト全体の空間参照系を決める際に少し困ることになります。そこで、今回はUTM座標系第53帯に変換することにします。
空間参照系の変換方法
空間参照系を変換したいシェープファイルのレイヤ上で右クリック→<名前をつけて保存する>を選択。
<パス>のところの<ブラウズ>をクリックし、ファイルを保存するフォルダを指定した上で、既存のファイルとは異なるファイル名を入力し、<保存>をクリック。
<CRS>のプルダウンから、変換先の空間参照系を選択(ここでは<EPSG:3099 – JGD2000 / UTM zone 53N>とする)。
<OK>をクリック。すると、エクスポートされたシェープファイルがレイヤパネルに追加された。
新たに追加されたシェープファイルのレイヤ上で右クリック→<プロパティ>を選択。
左側のメニューの<一般情報>を選択。<空間参照システム>が<選択されたCRS (EPSG:3099 – JGD2000 / UTM zone 53N)>となっていることを確認。確認できたら、<レイヤプロパティ>ウィンドウを閉じる。
(参考) ラスタデータはどうするか?
ラスタデータの空間参照系をどうするかについては、ケースバイケースであり、ここですべてのケースについて説明することはできません。ということで、ここでは、一連の作業で使っている事例についてのみ説明しておきます。
この事例では、旧版地形図のラスタデータが使われています([NA-GIS100])。結論を先にいうと、いっしょに使うシェープファイルに合わせて、このラスタデータの空間参照系をUTM座標系第53帯に再定義して新たなファイルとしてエクスポートする必要はありません。
なぜなら、この事例において旧版地形図のラスタデータは背景地図として利用しているに過ぎず、本格的な分析(ラスタ演算など)には使っていないからです。背景地図としての利用程度であれば、重ね合わせるシェープファイルと空間参照系が異なっていても特に支障はありません。このことについては、次の[NA-GIS103]でも説明します。
ひとまず、今回はここまで。プロジェクトの上書き保存を確実に行ってください。