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[NA-GIS99]旧版地形図をジオリファレンスする(前編)

Published by na-mii on 2016/12/29

今回と次回は、旧版地形図をジオリファレンスする手順や留意点について解説します。ジオリファレンスとは、簡単にいえば、位置情報をもたない地図画像データ(ラスタデータ)を、GIS上で正しい場所に位置合わせすることです。今回の前編では、ジオリファレンスを行うにあたって留意すべき点や準備について説明します。

(1) 旧版地形図をジオリファレンスするということ

今回想定しているのは、日本の正式2万分1地形図以降の旧版地形図です。明治中期から末期にかけて作成された正式2万分1地形図は、日本で初めてグリニッジ基準に基づき、三角測量などといった近代的測量方法を用いて作成された地形図です。もちろん最新の地形図と比べると劣る面もあるものの、基本的には正確にできている地図といえます。

近代以前に作成された地図、たとえば、近世絵図などをジオリファレンスしたい場合、アフィン変換などによる幾何補正を行い、地図を変形させながらできるだけ正確な位置に近づけるといったことがよく行われます。近世絵図などは、測量精度の面では大きな誤差や歪みがみられることが多く、地図をある程度変形させないと正しい場所に合わせることができません。

一方、近代地形図は基本的には正確にできており(紙地図をスキャンした際に歪みなどが生じる可能性はありますが)、地形図を大幅に変形させることは望ましくはなく、むしろできるだけ回避すべきといえます。

近代地図のジオリファレンスの基本的な方向性は、アフィン変換などによる幾何補正ではなく、地図上に記載されている経緯度や現実空間との対応関係などを参照していくつかのコントロールポイント(GCP:ground control point)を与え、画像データに位置情報を付加して地理情報化することといえます。

(2) 旧版地形図を確認

例として、1923(大正12)年測図の2万5千分1地形図「伊丹」を見てみましょう。

90年ほど前の北摂地域の様子がよくわかります。

正式2万分1地形図以降の地形図には、図幅の四隅に経緯度が記載されています。

ジオリファレンスを実行する段階でも、この四隅は重要です。

地形図の場合は、この四隅の経緯度を参照して位置情報を付加することができます。

(3) 測地系の違い

ただし、四隅の経緯度を参照してジオリファレンスを行おうとする場合、その経緯度が旧日本測地系によるものなのか、それとも、世界測地系(日本測地系2000[JGD2000]ないし日本測地系2011[JGD2011])なのかを正しく認識することが重要です。日本は2002年4月1日に旧日本測地系から世界測地系へと移行しているため、地形図の作成・発行日がこの日以前か以後かで基本的な判定はできますが、2002年前後に発行された地形図に関しては、地形図上の測地系等に関する記載を注意深く確認することが必要です。

今回例として挙げている1923年測図の2万5千分1地形図は、当然旧日本測地系によって作成されたものといえます。

(4) 測地系の変換

ここまでの作業([NA-GIS90~98]など)で使ってきたGISデータやプロジェクトは、基本的に世界測地系(日本測地系2000)によっています。上で確認した旧日本測地系による経緯度をこのまま用いて位置合わせを行おうとしても、ずれてしまうのが明白です。

そこで、旧日本測地系による経緯度を世界測地系による経緯度に変換する作業を行います。この変換作業は、国土地理院が提供しているWeb版TKY2JGDを利用すれば簡単に行うことができます。

Web版TKY2JGDにアクセスし、<変換方向>が<日本測地系→世界測地系>になっているかを確認。

四隅の経緯度のうち、まずは左上から変換する。入力例を参考にし、<緯度>の欄に<345000>、<経度>の欄に<1352240.4>と入力。

入力の仕方がやや独特なので、入力例をしっかりと確認。

<計算実行>をクリックすると、計算結果が右側に表示される。この計算結果をメモしておく。

旧日本測地系と世界測地系にはこれだけのずれがあります。

右上・右下・左下の経緯度についても、同様に変換を行い、計算結果をメモ。ここにはあえて結果を書きませんので、各自で変換を行ってください。

次回の後編では、これら変換後の経緯度を用いてジオリファレンスを行います。

 

(参考)正式2万分1地形図を使うときの注意点

正式2万分1地形図についても、基本的には上記と同じ手順でジオリファレンスを行うことができますが、正式2万分1地形図に記載されている経緯度には注意が必要です。たとえば、正式2万分1地形図「伊丹」の四隅は以下の図のようになっています。

10.4秒が省略されているなんて、知らなければわかりません。

ここで、Web版TKY2JGDにおいてこの通りに経緯度を入力し、世界測地系に変換された経緯度を用いてジオリファレンスを行うと、実際の場所とずれてしまいます。

実は、正式2万分1地形図の経度は10.4秒が省略されて記載されており(一部の地形図には10.4秒まで記載あり)、変換作業にあたっては、記載されている経度に10.4秒を足してから変換を行う必要があるのです。たとえば、上図の左上の経緯度の場合、緯度はそのまま<344800>と入力しますが、経度については<1352410.4>と、10.4秒を加えた値を入力しなければなりません。

それでは、後編に続きます。

Filed under: GIS and Tagged: GIS, NA-GIS, QGIS, QGIS学習ノート, 大阪大学, 授業
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