まさかの前後編!まさかの前回QGIS登場なし!まさかの内容の薄さ!・・・と、異例の展開となった「座標参照系」ですが、ごく一部から「おみかん」についてお叱りもいただきましたので、今回はまじめにいきたいと思います。
まず、前回の「座標参照系(前編)」のおさらいですが、測地系と座標系の組み合わせによって異なる種類の地図データが混在しており(日本の場合、主に6種類)、使おうとしている地図データの座標参照系が何なのかを意識する必要があるという話でした。
ここで、この「QGIS学習ノート」シリーズを振り返ってみると、第3・4回で地図データを使ってますね。はて、座標参照系なんて意識してましたっけ?いいや、していない!(断言・・・していいのか不安になり読み直しているところ。・・・うん、やっぱり意識してなかった!)
そのときは、とりあえず使ってみよー!というコンセプトだったのでまあ良いのですが、座標参照系について知ってしまったからには、もう無視することはできません。
では、第3・4回で使った「全国市区町村界データ」の座標参照系を調べてみましょう。それは、リンク先のページにちゃんと書いてあります。「座標系」という項目のところに、「緯度経度座標 (回転楕円体:GRS1980、データム:JGD2000)」って記されてますね。ふむふむ。・・・って、えっ、何これ、よくわからん。GRS1980とかJGD2000とか何よ?聞いてないよー。
・・・すみません、前回オレンジとか伊予柑とか意味不明の言葉を使って、肝心の用語について説明していませんでした。まず、このデータが緯度経度座標系であることはすぐわかります。次に、GRS1980っていうのは、世界測地系で採用されている準拠楕円体の1つです。なので、この全国市区町村界データは「世界測地系・緯度経度座標系」であるといえます。最後に、JGD2000については簡単に説明するのが難しいのですが(というか、データムが難しいのですが)、まあ、JGD2000という表記をみたら「(日本での)世界測地系なんだな」と思っとけばいいってことで(逃げ)。
地図データの座標参照系が確認できたので、QGISに読み込みます。しかし、いきなりベクタレイヤの追加とかやったのでは、第3回とまったく同じで、何やってんだかという話です。ここで踏みとどまって、QGISのプロジェクト(作業ファイル)の座標参照系がどうなっているのか、確認してみましょう。<設定>→<プロジェクトのプロパティ>を選択し、<座標参照系(CRS)>のタブをクリックすると、次のような画面があらわれます。
わかりにくいかもしれませんが、「WGS84」がハイライト表示されています。つまり、プロジェクトの座標参照系は「WGS84」だということです。さらに付け加えるなら、QGISの座標参照系の初期設定は「WGS84」になっているということです(これまでまったくいじってないですからね)。
「WGS84」とは何かですが、世界測地系・緯度経度座標系です。JGD2000が日本の(主に日本で使われている)座標参照系であるのに対して、WGS84は世界標準といって良いもので、GPSの位置情報の基準もこれです。じゃあ、JGD2000とWGS84はどちらも世界測地系・緯度経度座標系だけど何が違うの?と思ってしまうわけですが、初心者レベルでは「両者はほとんど同じもの」と考えて良いみたいです。もちろん、厳密にいえば、両者に細かい差はあるんですけどね。
というわけで、結果的には、何も考えずに「全国市区町村界データ」を読み込んでもOKなのでした。ただ、どうしてもJGD2000とWGS84の細かい差が気になるという人は、プロジェクトの座標参照系をJGD2000に設定すれば心安らかになると思います。
重要なのは、WGS84とはまったく違う座標参照系の地図データを読み込む前には、必ずプロジェクトの座標参照系を変更しなければならないということです。日本測地系や、世界測地系でもUTM座標系や平面直角座標系のデータを使うときには、プロジェクトの座標参照系をそれに合わせないと何かとまずいことになります。
では、例として、プロジェクトの座標参照系を「世界測地系・平面直角座標系」に設定してみましょうか。上で示した画面の<座標参照系>のリストの中から選択するのですが・・・、これが非常に探しにくい!というか、「世界測地系・平面直角座標系」で探しても見つかりません(困)。
見つからないのは、QGISでの座標参照系がすべて英語表記になっているからです。そこで、以下、日本でよく使われる座標参照系の(QGISでの)英語表記をリストで示します、謎のIDとともに(並びは、英語表記|権限ID|ID)。
- 日本測地系・緯度経度座標系:TOKYO|EPSG: 4301|3432
- 日本測地系・UTM座標系(51帯):TOKYO / UTM zone 51N|EPSG: 3092|1055
- 日本測地系・平面直角座標系(第1系):TOKYO / Japan Plane Rectangular CS I|EPSG: 30161|2566
- 世界測地系・緯度経度座標系:JGD2000|EPSG: 4612|3465
- 世界測地系・UTM座標系(51帯):JGD2000 / UTM zone 51N|EPSG: 3097|1060
- 世界測地系・平面直角座標系(第1系):JGD2000 / Japan Plane Rectangular CS I|EPSG: 2443|412
じゃあ、リストの中から探そうかといきたいところですが、はっきり言ってめんどくさいです。そこで便利(?)なのが、権限IDで検索する方法です。世界測地系・平面直角座標系(第1系)に設定したいときは、<Search>の中の入力フォーム(前掲画像参照)にEPSGの右にある数字「2443」を入れて<Find>すれば、一発で<JGD2000 / Japan Plane Rectangular CS I>が表示されるので、それを選択して<OK>でOK。・・・えっ、「EPSGって何?」って?知・り・ま・せ・ん!
ちなみに、日本が関係するUTM座標系は51帯から56帯まで、また、平面直角座標系は第1系から第19系までありますが、上記の権限IDの数字に1ずつ足していけば該当の座標系になります。世界測地系・平面直角座標系(第6系)なら、EPSG: 2443+5=EPSG: 2448といった具合ですね。なお、TOKYO or JGD2000 / UTM zone 56Nだけ見当たらないのですが、どうしたらいいのかな?世界測地系の場合は、WGS 84 / UTM zone 56N(EPSG:32656)を使えば良いのかな?日本測地系の場合は・・・、ちょっとわかりません。
一度使った座標参照系は、<最近利用した座標参照系>のところにリストされるので、次からは探し出す必要はありません。
それにしても、権限IDで検索する方法があるとはいえ、率直に言ってQGISにおける座標参照系の設定関係はわかりにくいと思います。だから、こんなに長文になったのです(責任転嫁)。
若干補足すべき点もあるのですが、それはまた「補足編」で・・・。