「QGIS学習ノート」シリーズ第6弾。前回に引き続き、「そろそろ細かいこと、地味なことにも少しずつ気を配っていきましょう」特集(長っ)として、「座標参照系」をテーマにお届けします。(しつこいようですが、検索等でこのページにたどり着いた人は、まず「はじめに」をお読みください。)
しかし、はぁ・・・。自分でテーマを選んどいてナンですが(インド料理ではない)、このテーマについて書くのは気が重いです。これまでGISの授業を担当させていただいてますが、座標参照系(というか、いつもは測地系・座標系といっていますが)は苦労するのです。いまひとつ、うまく教えられないのです。・・・って、なんとセキララな!(らーらー、らららー♪)こんなこと書いていいのかって感じですが、これから書く内容に予防線を張るためなら何だって書きます!(本当にいいの?)
さて(軌道修正)、座標参照系はGISをやる上で避けて通れないものなんですね。それは、初心者も例外ではありません。たとえば、またおいおい紹介しますけれど、フリーの地図データをダウンロードするときに、同じ地域のデータが2種類(あるいはもっと)あったりします。そこで、「UTMって何?ATMじゃなくて?」とか、「ヘーメンチョッカクザヒョーケー?アーメン」とかなったりするんですね。
このエントリは、あくまでもQGISの学習がメインテーマですから、以下では、座標参照系そのものの説明は最小限にとどめます。その上で、QGISの利用にあたって、座標参照系が関係する部分や注意すべき点について書きたいと思います。
まず、座標参照系のポイントとして、「地球のかたちをどのように考えるか」という点が挙げられます。なぜか柑橘類で例えるなら、このおみかん、地球にとっても似ているよ、あら、この伊予柑も、というのがいくつもあるのです。でも、現在は、このオレンジこそ地球に一番そっくりだ、かたちも、ゆがみも、色つやも(いや、色つやは関係ない)、すべての面からみて至高のオーレンジだ、というのが決まってるんですね。すなわち、グローバルスタンダードのオレンジ、もう少し専門的にいえば、準拠楕円体です。もちろん、この準拠楕円体は偶然の果実ではなく、きわめて高度で精密な観測・解析・計算によって導出された地球のモデルです。
一方、日本は長らく、地球のモデルとしておみかんを使ってきました。それも、年代物のおみかんです(1841年にできたベッセル楕円体)。これもそこそこ正確なものの、やはり最新形オレンジと比べると精度は劣ることがわかっています。というわけで、日本は2002年4月1日以降、グローバルスタンダードへと移行しています。
はい、では、ここで第1のまとめ。ベッセル楕円体に基づいて作成されたデータは、日本測地系のデータと呼ばれています。他方、グローバルスタンダードな準拠楕円体に基づいて作成されたデータは、世界測地系のデータと呼ばれています。・・・って、こんなふうに書いちゃって大丈夫かなあ?
・・・などと言いつつも、次に進みます。地球のかたちが決まったら、次は座標が必要になります。オレンジやおみかんの表面のどこかを原点と決めて、縦軸横軸の線を引き、それをものさしにして任意の場所の位置情報を特定するわけですね。このものさしの引き方も、いろいろあるのです。イメージしやすいのは、緯度と経度による座標でしょうか。これは地理座標系とか、あるいは、単に緯度経度座標系と呼ばれています。地球儀のように、地球を3次元でとらえる場合にはこれで十分ですね。
でも、地図とか、ディスプレイ上での表示とか、地球(地表面)を2次元でとらえるためには、丸い地球を平面に「投影」する必要があります。おみかんをぺしゃんこにつぶすわけにはいかないって話です。ほら、アニメとかで、重たいものにつぶされて人間がぺしゃんこになったりしますけど、あれってはらわた(以下略)。・・・えっと、投影された地表面(の一部)に引いたものさし、これが投影座標系と呼ばれているものです。で、投影法の話は難しいのでさくっと省略して、日本では、主にUTM座標系と平面直角座標系というものが使われています。UTMはウルトラマンの略ではなくて、UTM座標系っていうのは、まあ、オレンジの皮を60等分になるように超きれいにむいて、その1枚1枚に座標を設定したものです(わかりにくっ)。日本の国土は、51枚目から56枚目までの中に入ります。他方の平面直角座標系は、日本の国土を19に分割し、それぞれに座標を設定したものです。
ここにきて馬脚をあらわした感じですが、気にせずに第2のまとめ。正確な位置情報を特定するための座標として、地理座標系(緯度経度座標系)と投影座標系の2つがあります。また、投影座標系にもいろいろありますが、日本ではUTM座標系(51帯~56帯)と平面直角座標系(第1系~第19系)がよく使われています。
以上をふまえると、測地系(というか準拠楕円体)と座標系の組み合わせによって、日本では次の6種類の地図データが混在していることになります。
- 日本測地系・緯度経度座標系
- 日本測地系・UTM座標系
- 日本測地系・平面直角座標系
- 世界測地系・緯度経度座標系
- 世界測地系・UTM座標系
- 世界測地系・平面直角座標系
GISで地図データを扱う際には、こうした違いをしっかり意識するようにしましょうねっ!
・・・って、あれぇっ?!ここまで書いて、まだQGISを立ち上げてすらいないじゃないか!おおお・・・・・・(絶句)。さすがに長くなりすぎたので、まさかの後編へと続く・・・。っていうか、前編は要るのか?
[2012年2月25日追記]QGIS上の用語に合わせて、タイトルおよび本文中の「空間参照系」という表現を「座標参照系」に変更しました。