[NA-GIS102]では、シェープファイルの空間参照系を変換する作業を行いました。今回は、プロジェクト全体の空間参照系を定義(再定義)する方法と留意点について説明します。(QGIS 2.14.9を使用)
なお、ここまでの作業の流れを受けて、以下、プロジェクト全体の空間参照系をJGD2000・UTM座標系第53帯に定義するという事例で説明を進めます。
(1) 新たにプロジェクトを作り直す方法
こちらは、これまでのプロジェクトとは別に、新規プロジェクトを作成して必要なデータを読み込むという方法です。手間はかかりますが、確実性の高い方法だと思います。
1-1. 新規プロジェクトを作成
QGISを立ち上げ、新規のプロジェクトを作成。
1-2. シェープファイルを読み込み
<ベクタレイヤの追加>から、[NA-GIS102]で空間参照系をUTM座標系第53帯に変換したシェープファイルを読み込む。
1-3. ラスタデータを読み込み
<ラスタデータの追加>から、[NA-GIS100]でジオリファレンスを行った旧版地形図のラスタデータを読み込む。
<空間参照システム選択>の画面では、<JGD2000>(EPSG:4612)を選択し、<OK>をクリック。
・・・ここで、おやっ? と思った人もいるでしょうが、その疑問に対する説明は後ほど。
1-4. プロジェクトの空間参照系を確認
<プロジェクト>→<プロジェクトプロパティ>を選択。
<プロジェクトのプロパティ>の画面左側の<CRS>を選択。画面下部にある<選択されたCRS>を見ると、すでに<JGD2000 / UTM zone 53N>になっている。
実は、1-2でJGD2000・UTM座標系第53帯のシェープファイルを読み込んだ時点で、プロジェクトの空間参照系もJGD2000・UTM座標系第53帯に指定されています。このことと、上図の画面上部にある<’オンザフライ’CRS変換を有効にする>にチェックが入っていることは関係があります。「’オンザフライ’CRS変換」については後ほど説明します。
1-5. プロジェクトを保存
<プロジェクト>→<名前をつけて保存>と進み、プロジェクトファイルを保存。
(2) 既存プロジェクトの空間参照系を再定義する方法
こちらは、これまで使ってきたプロジェクトを生かし、空間参照系を再定義する方法です。話の前提として、[NA-GIS102]終了時点から再開するかたちで説明を進めます。
2-1. 不要なレイヤを削除
[NA-GIS102]終了時点では、同じ地物だが空間参照系が異なる2種類のレイヤがレイヤパネルに並んでいる(はず)。
UTM座標系第53帯のシェープファイルレイヤのみを残し、不要なレイヤを削除。
2-2. プロジェクトの空間参照系を再定義
<プロジェクト>→<プロジェクトプロパティ>を選択。
<プロジェクトのプロパティ>の画面左側の<CRS>を選択。画面下部にある<選択されたCRS>を見ると、この時点では<JGD2000>となっている。
画面中央の候補の中から<JGD2000 / UTM zone 53N>(EPSG:3099)を選択し、<選択されたCRS>が変更されたことを確認した上で、<OK>をクリック。
2-3. プロジェクトを上書き保存
<プロジェクト>→<保存>を選択し、プロジェクトファイルを上書き保存。
(3) プロジェクトの「単位」を確認する
<プロジェクト>→<プロジェクトプロパティ>を選択。
<プロジェクトのプロパティ>の画面左側の<一般情報>を選択。
<距離計測の単位>、<面積計測の単位>、<表示座標の単位>を見ると、いずれも<メートル>(平方メートル)になっていることを確認できる。
(4) 「’オンザフライ’CRS変換」とは?
「’オンザフライ’CRS変換」とは、簡単にいえば、空間参照系が異なるレイヤが混在していても、プロジェクト全体に定義されている空間参照系に合わせて各々のレイヤの位置合わせを自動的に行なってくれる機能です。2-2の最初の段階では、空間参照系が異なるレイヤが混在している状態でしたが、この機能によってすべてのレイヤが正確な場所に表示されていたのです。
また、この機能は、新規プロジェクトにレイヤを読み込むときにも働きます(上記(1)を参照)。
[NA-GIS102]において、今回の事例でラスタデータの空間参照系を再定義する必要はないと書いた理由も、’オンザフライ’CRS変換が働くことにより、ラスタデータの位置合わせが自動的に行われるからです。なお、1-3で旧版地形図のラスタデータを読み込む際に<JGD2000>を選択したのは、[NA-GIS100]で作成したワールドファイルがJGD2000による位置情報をもっているからです。ラスタデータを読み込むときは、ワールドファイルがもつ位置情報がどの空間参照系によって定義されているかを認識して行うことが肝要です。
では、今回はこのへんで。